拠点推進の基本理念に基づいて、東京電力からの現場ニーズを基に1F廃炉促進に必要な4つの研究分野、1.デブリ取り出し 2.廃棄物処理 3.過酷環境での分析とセンシング 4.環境修復 が選定され、以下の各研究課題を展開している。
●燃料デブリ取り出し時の再臨界防止に関する研究
MPS-DEM法(粉体解析手法)によるシミュレーションと臨界解析を組み合わせることで、粒子状の燃料デブリの水中での移動を考慮した臨界性評価手法を確立し、実機体系での適用性に関する研究を進めている。
● 1F事故時の燃料破損メカニズムの研究
チャネルボックスと制御棒ブレードの接触箇所から金属系初期融液が形成されて損傷が進展した可能性が高い。当該事象に関わる材料の事故条件下における物理化学的現象を解明することにより、形成されたデブリの特性を評価する研究を進めている。
●放射性廃棄物の減容固化に関する研究
汚染水処理により発生する放射性廃棄物を低温焼結、プラズマ焼結(SPS)、等方性圧縮により、セラミックス、ガラス、金属として安定固化する研究を進めている。
●廃棄物保管・管理・処分のためのデータプラットフォームに関する研究
燃料デブリや固化廃棄物などの1F廃棄物に関する管理システムのデジタルツインにより、長期にわたる安全なデータ管理の実現を目指す研究を進めている。
●オンラインαダスト分析技術研究
廃液等に存在するU/Puを含む様々な微粒子(αダスト)の粒径、組成等をオンラインで計測できる新しい分析技術を開発している。
●極限環境センシング研究
光ファイバセンサを用いて室内のわずかな温度変化を測定し、その温度分布から熱源(放射線源)の位置を特定する技術を開発している。
●原子炉建屋の漏洩源調査技術に関する研究
延長長尺ロボットアーム(スーパードラゴン)を開発し、ロボットアームに設置したカメラや超音波測定器により、原子炉建屋内の滞留水およびパージガスの漏洩を調査する技術を開発している。
●高性能空気清浄システムに関する研究
PCVへの大型機器の搬入に向け、作業員の被ばくを低減するために原子炉建屋やPCVの空気浄化を行うスクラバー及びフィルターからなる空気浄化システムの開発研究を行っている。
これらの研究成果は、2024年10月に福島県楢葉町Jビレッジで開催された国際会議FDR2024(International Topical Workshop on Fukushima-Daiichi Decommissioning Research 2024)において、「Tokyo Tech‘s Collaboration Research with TEPCO for Decommissioning」というタイトルでシリーズ発表されている[8]。更に、廃炉技術集成アーカイブとして書籍化も進めている。「Innovative Technology born from the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant Accident」というタイトルで2025年3月を目途にSpringer Natureから出版が予定されている。